西川進の軽い興奮状態
興奮日記
2002

★12/23
それどころじゃない

 人にはそれぞれ一人一人の生活があり、
生きて行くためには、誰しもがなんらかの職業を持ち、
時には生き甲斐を感じながら、時には苦痛を感じながら
あくせくと働くのであります。
そんな中、誰しもが「働いてる場合じゃない」
「それどころじゃない」という局面に立たされる事が
必ずあるのでございます。
軽度な事では、「部屋のストーブをつけっぱなしで出社した」
「家の鍵をかけ忘れた」「ペットに餌をあげていない」
等があり、重度な事では、
「友達、恋人、家人等が病気またはけがをしている」
「友達、恋人、家人等とけんかをして精神的不安定」
「家が火事になってしまった」
「家に強盗が家人を人質にしてたてこもってる」
等があり、こうなってくるとまじで、
働いてる場合じゃないのであります。

 真面目な顔をして作業をする職業の場合、
自分の精神的苦痛が顔に出ていてもさほど
回りに影響はないのかもしれません。
(実際はあるのだろうけど)
しかしながら、自分が楽しみ、そして周りを楽しませる職業、
例えば、漫才師、落語家、スマイルを売るマクドの店員さん、
そう言った方々はそれどころじゃない場合であっても
笑顔を作り、テンションを上げなければならないのであります。

 そして私も音楽家ということでどちらかと言うと
後者の仲間なのでございます。
「それどころじゃない」時も、現実を忘れテンションをあげ、
いい作品を残さなければならないのであります。
悲しかな、最近ではいとも簡単に
それが出来てしまうのであります。
知人が病気で苦しんでいようが、
けんかをして修羅場になっていようが、
音楽が始まってしまうと、入り込み、
テンションが上がってしまう。
そうしないといい作品が出来ないと、
体が知っているのであります。
なんて薄情な道化ものなのでございましょうか。

 そして、「それどころじゃない」最高レベルが、
「肉親の死」
なのでございます。
(戦争発起、隕石追突、人類滅亡等は例外として)
これを避けるには、誰よりも先に
自分が死ぬ以外にないのでありますが。
私には自殺する勇気はございませんし、
やりたいことがまだまだありますゆえ
まだ死にたくありません。
なにせその時は必ずやってくるのです。

実際何年か前、母が他界する間際、
私はレコーディングをしておりました。
兄からの知らせでかけつけましたが間に合いませんでした。
癌で余命がわずかと言う時も
ヘッドバンキングしてギターを弾き狂っておりました。
なんて薄情者のお馬鹿なのでしょう。

今後、「それどころじゃない」最高レベルは
いつかは容赦なくやってくる現実であり、
その時に自分がどのように考え
どういう行動をとるのか、
想像できないし、考えたくありません。
ただ、自分の職業に誇りを持つと言う事で、
薄情者が犯してきた罪を、自分で緩和し、
自分で慰め、私が薄情をした対象の人物が
「音楽馬鹿なんだからしょーがないか」
と思ってくれていると勝手に解釈し、
これからの人生をなんとか精進していこうかと
思う今日この頃でございます。

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